建築・構造物保護効果

壁面緑化によるその他の効果として、建築・構造物への保護効果があります。建築躯体の膨張や収縮を招く熱伝導の低減効果、コンクリート造の場合の躯体の中性化や塩害等の影響を軽減する効果等が報告されています。

(1)日射による建物への熱伝達を緩和する効果・・・前述のヒートアイランド現象の緩和効果で示したとおり、壁面緑化の大きな効果の一つとして遮熱効果(建築本体への熱の伝達を遮る効果)があるといわれています。

コンクリートは蓄熱作用が大きく、絶えず温度差による膨張と収縮を繰り返しています。壁面の表面温度は日中、気温よりも高くなり、夜間は気温よりも低くなります。

このように1 日の温度変化が大きいと、膨張と収縮は非常に多なものになり、建物の構造の劣化に大きな影響を及ぼします。

壁面緑化は、コンクリート面への日射を直接的に防ぐため、蓄熱によるコンクリートの膨張収縮は抑制され、コンクリート本体の耐久性が高まり、ヒビ割れ等の美観保持や、外壁への塗装等の耐用年数も向上すると考えられます。

(2) 紫外線を低減する効果・・・近年特にその総量が増加した紫外線は、建築物や構造物の劣化に大きな影響を与えるといわれています。

紫外線はコンクリート表面の劣化を促進し、石油化学物質由来のコーキング材(目地等に用いられている)は紫外線への耐性が弱く、長時間の照射によって劣化してしまうのです。

植物の葉が紫外線を反射することは古くから知られています。壁面緑化をすることで、葉が壁の前に重なりあって層をなし、この層が紫外線の乱反射を促すことで、壁面への紫外線の直達を軽減します。

(3) 効果を活かした建築・構造物の設計基準の検討・・・壁面緑化による保護効果として、日射の遮断以外に植物等(パネル型等の場合は壁と植物の間に植栽基盤も含む)による保湿効果、塩害低減効果(壁面緑化に使用されるツタの葉は、4月から10 月で70%、11月から3月で20%もの塩分を吸収するという報告もある)、中性化防止効果があります。