植物の根について

壁面緑化に付着植物を利用するとき、『クラックから植物の根が壁に入り、建物を壊す』、『根からの分泌物が壁の表面を溶かす』といった建物への被害について問題になることがあります。

根は、植物の根同様土の中と同じように、暗い、湿度が安定して高いという条件を好むため、コンクリートなど凹凸のある面に触れるとその孔隙部分に入り込むことからクラックなど空隙の大きい空間に、根が入り込むことが危惧されてきました。

実際、外壁のヒビや目地が劣化している場合には、そこに水分がたまりやすくなるので、根が多く成長します。同様に、表面がモルタルや吹きつけ処理された木造住宅、老朽化した家屋等は、根を持つ植物にとって好適な条件と言えます。

植物の根は「根酸」と呼ばれる有機酸を出し、周囲の有機質を溶かして養分を吸収するといわれています。

根は土壌に付着すれば通常の根と同じように機能することから、根が壁の表面を溶かしていることも考えられなくもありませんが、実際には、これらのような作用によって構造物が破壊されたという報告は、ほとんどないようです。

クラック等に侵入した根は、肥大しすぎると自らクラックをふさぐことになり、水の供給がなくなって生長・肥大が困難になるため、コンクリートやレンガ、タイル等の強固な構造物では「根酸」の影響もごく表層に限られると考えられます。

壁面緑化が盛んなヨーロッパの国々でも、ツル植物によって建物が壊れたといったような話はないようですが、屋上緑化では、植物の根が劣化した目地などから侵入し、屋上の防水能力に影響を及ぼした事例はあります。

落ち葉が排水溝を詰まらせて冠水、雨漏りしたという報告もあり、植物が原因となり建物に被害を与えることもあるので注意が必要です。